IKH - 新知創造学際ハブ

金属遺物ユニット研究会「恐竜学部のCT装置」を開催しました

6月25日、新知創造学際ハブの「金属製考古資料分析ユニット」、通称「金属遺物ユニット」の第12回定期研究会がオンラインで開催されました。

今回の話題提供者は、この春、東北大学 総合学術博物館から福井県立大学 恐竜学部に異動した鹿納 晴尚(かのう はるまさ)氏で、テーマは「CTによる銅鏡の内部観察および福井県立大学恐竜学部のCT装置の概要」です。鹿納氏は、東北大学 総合学術博物館在任時はX線CT撮影を担当し、学際ハブの研究に貢献していました。現在は新しく恐竜学部に導入されたX線CT装置を担当しています。今回は、新知創造学際ハブの銅鏡を、東北大のX線CTと恐竜学部のX線CTで撮り比べた成果を発表しました。

X線CTの疑似カラー断層像を3枚比較(発表スライドより)

金属遺物ユニットとは

学際ハブの「ユニット」とは、学際ハブで繋がる多くの分野の研究者たちがテーマを絞って情報を共有し議論する場です。この金属遺物ユニットは、東北大学 総合学術博物館の藤澤 敦 教授が幹事となって、定期研究会をオンライン開催しています。今回は20名が参加しました。

恐竜学部のCT装置の紹介

鹿納氏は、福井県立大学の恐竜学部の紹介のあと、春に導入されたばかりのX線CT装置についてスペックや使い勝手などを詳細に説明しました。また、撮影から観察までの手順を説明しました。

恐竜学部のCT装置外観(発表スライドより)
恐竜学部のCT装置のハッチ内部(発表スライドより)

恐竜学部のCT装置による銅鏡の撮影結果について

鉛を含み回転時に厚さが大きく変化する銅鏡はCT撮影が難しい対象の一つです。鹿納氏は金属材料研究所の銅鏡を東北大のCT装置で撮影していますが、X線がうまく通らなかったので、恐竜学部のCTではどうか試しつつ、まだ慣れない新しいCT装置の検証をするのに適した資料と考え、再び同じ銅鏡を撮影したのでした。

鹿納氏はまずCT撮影で発生するノイズの主なもの「ビームハードニング」について説明しました。エネルギー分布を持つX線を照射するため、エネルギーが低いX線ほど先に物質に吸収され、より遠くにある物質にはエネルギーが高いX線が当たることになり、再構成されたCT像に不自然な明暗が生じたりする現象です。対策として金属フィルターを使うと軽減するそうです。

鹿納氏は、3枚の銅鏡を置き方や撮影モードを変え15回撮影した結果を報告しました。ビームハードニングの影響が及ぶ範囲を銅鏡の画像に描きこんで比較したり、画像を並べて比べたりしました。装置のX線源の特性や検出器パネルのサイズ・形状を踏まえて、資料の設置方法を検討し、最適な撮影モードを選択すべきという結論を得ました。CT装置の検出器パネルの形状(正方形か長方形か)によって検出器を有効に使う置き方の工夫の余地があります。

今回撮影対象にした3枚の銅鏡(発表スライドより)
撮影条件の違いとビームハードニングの影響(発表スライドより)
銅鏡を斜めに置いた場合(緑)と垂直に立てた場合(赤)に回転時に通る位置と検出器パネルの形状の考察に使った図(発表スライドより)
全体撮影後拡大表示した像と拡大撮影した像の比較(発表スライドより)

恐竜学部と東北大学学術博物館のCT装置の違い

福井県立大学 恐竜学部のCT装置(Comet)と東北大学学術博物館のCT装置(ScanXmate)について、スペックの比較表を示し前提条件の違いを説明した後、同じ銅鏡を撮影した結果を比較した静止画および動画を示しました。

恐竜学部のCT装置は東北大の博物館の装置に比べて最大管電圧は2倍以上大きいものの、銅鏡の厚みがある部分は完全には透過できませんでした。しかし、ビームハードニングの影響は比較的小さくなることが分かりました。

CT装置の違いによるノイズの比較(発表スライドより)
銅鏡を紐を中心に回しながら比較した動画の一画面(発表スライドより)

質疑や議論の時間

話題提供後の質疑や議論の時間には、東北大博物館のCT装置と恐竜学部のCT装置のスキャン時間の違いについての質問や、スキャン方式についての質問がありました。

また、同じ銅鏡の「す(鋳造後、冷える過程で生じた気泡)」の見え方が装置や撮影条件によって違うのは考古学的に問題で、そのような考察は既にされているのかという質問がありました。鹿納氏は、「見え方は相当変わってくるはずです」と答え、資料の形状、X線の通りやすさなどをよく知り時間をかけてやらないと本当に見るべきものが見えてこない、その判断ができないということでした。

島根大学の岩本准教授は、まだ考古学者がX線CTを使った微細構造の考察に慣れておらず、そこまで厳密な議論にはなっていないと断った上で、実際に金属遺物の断面を見てみると断面の厚みによって「す」の状態が違うことは明らかで、厚みの多いところ(例えば、湯口付近)ほど「す」が入りやすいのでそのようなところを今後CT装置を活用して分析していくことは考えられ参考になりました、と話しました。

また、新知創造学際ハブのファシリテーターであるノンフィクション作家の山根 一眞 氏は銅鏡の由来について質問した後、鏡をX線CTで見る理由を尋ねました。鹿納氏は物理的には「す」の入り方の情報を得るためと答え、藤澤氏が補足して考古学的な理由を答えました。「す」の他に、想定していない発見がある可能性を述べ、青銅器から密度の高い粒(恐らく鉛)が見えた例を挙げました。

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