4月23日、新知創造学際ハブの「金属製考古資料分析ユニット」、通称「金属遺物ユニット」の第11回定期研究会がオンラインで開催されました。
今回の話題提供者は藤澤 敦 氏で、テーマは「金属製考古遺物の微量サンプル採取による分析 ver1+」です。藤澤氏は、学術資源研究公開センター 総合学術博物館の特任教授で専門は考古学です。今回は自身が行った金属遺物からのサンプル採取について話題提供しました。

金属遺物ユニットとは
学際ハブの「ユニット」とは、学際ハブで繋がる多くの分野の研究者たちがテーマを絞って情報を共有し議論する場です。
この金属遺物ユニットは、東北大学 総合学術博物館の藤澤 敦 教授が幹事となって、原則第2木曜日の16時30分から1時間30分の予定で定期研究会を開催していますが、今回は特例で第4木曜日となりました。イレギュラーな日程での開催でしたが、オンラインで21名が参加しました。
微量サンプリングの試行
藤澤氏は、出土地不明の考古資料である耳環を例に、微量サンプル採取を試しました。表面が錆びていて外からでは人文的な情報が得られない金属遺物の、酸化していない金属部分を採取し、その成分を明らかにすることが目的です。
耳環は、金属遺物ユニット第8回研究会「金研機器を用いた金属遺物の分析(1)―SEM-EDSを用いた検討」でも紹介されたもので、芯材の周りに被覆材を巻き付けて作られています。先行研究により、芯材には、ほぼ純銅に近いものと銅-鉛合金があることが知られています。銅-鉛合金の場合、鉛は粒状に偏在している可能性があり、今回はどこからどのくらいの量をサンプリングすべきかを知るための試行実験となります。
X線CTによる観察
サンプリングの前にX線CT撮影を行い断面観察することで、より少ないダメージで芯材に到達できる部分を探し、かつ実際に安定して作業できるところを選びました。模型工作などで使用するピンバイスという手動ドリルに、直径1.0 mmから1.4 mmの刃を付けて掘りました。掘り過ぎて簡単に折れたりしないよう、強度が保たれる深さを心掛けたそうです。
採取後にも耳環のX線CT撮影を行って、目的の場所が採れているかを確認しました。X線CT撮影は総合学術博物館に備え付けの装置のうち、高出力の装置を使いました。
さらに、採取された切片のX線CT撮影も試しました。

青色が濃いところは薄いところよりも密度が低く、酸化層であると考えられる

SEM-EDSによる観察と分析
採取できた切片を金属材料研究所の走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)で分析しました。切片表面の元素分析により芯材は銅製であることが確認できました。鉛は検出できませんでした。


銅が検出されているのが分かる
XRF(蛍光X線分析)による分析
切片はそのまま簡易的に、より感度の高い分析手法である蛍光X線分析も行われました。金研の杉山和正名誉教授により、微量分析がどこまでできるかと、表面形状の差が大きく出ないかの検証のための実験です。新知創造学際ハブの参画機関である岩手大学 平泉文化研究センターの研究者の協力を得て、岩手大学にあるXRF装置で分析されました。
その結果、やはり鉛は検出されず、わずかな不純物を含むだけの「純銅」と言ってもいい金属であることが確認できました。
藤澤氏は今後も課題を解決しながら分析を続けるとのことです。
質疑や議論の時間
話題提供後の質疑や議論の時間には、X線CTの解像度など技術的な質問のほか、採取するサンプルの量や他のサンプリング方法、さらにはサンプリング後の修復方法について参加者同士のやり取りがありました。
また、そもそもの話として、考古学資料のサンプリングの是非についての議論もありました。「サンプリングによって失われる情報と得られる情報のバランスと、その後の資料の保存活用にどこまで影響が出るのか。サンプリングの目的も含めての判断になると思う。組織によってハードルは違うのでは」という意見が印象的でした。

次回の開催について
次回は6月に開催の予定です。
学際ハブの活動に関心を持ってくださる研究者で、金属遺物ユニットに参加ご希望の方は、学際ハブ推進室までご連絡をお願いします。
※Googleフォームが立ち上がりますので、[お問い合わせ項目]では「研究会等イベントについて」を選択し、[お問い合わせ内容]に「研究会参加希望」とお書きください。
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