IKH - 新知創造学際ハブ

金属遺物ユニット研究会「青銅器のサプライチェーン」を開催しました

7月10日、新知創造学際ハブの「金属製考古資料分析ユニット」、通称「金属遺物ユニット」の第7回定期研究会がオンラインで開催されました。

金属遺物ユニットとは

学際ハブの「ユニット」とは、学際ハブで繋がる多くの分野の研究者たちがテーマを絞って情報を共有し議論する場です。

この金属遺物ユニットは、東北大学 総合学術博物館の藤澤 敦 教授が幹事となって、原則第二木曜日の16時30分から1時間30分の予定で定期研究会を開催しています。

弥生~古墳時代の青銅器

オンラインでの発表のようす。銅鏡の写真を背景に「弥生・古墳時代の青銅器サプライチェーンを考える 岩本 崇(島根大学)」と書かれている

今回の話題提供者は島根大学法文学部の岩本 崇 氏で、テーマは「弥生・古墳時代の青銅器サプライチェーンを考える」です。岩本氏は、社会経済史的な観点から弥生から古墳時代の青銅器をめぐるモノの流れを把握する研究に取り組んでいます。

鉛同位体比分析

地球ができてからウランUやトリウムThなどの放射性崩壊によってできた鉛の同位体(204Pb, 206Pb, 207Pb, 208Pb)の存在比は鉱床ごとに異なります。鉛が濃縮した鉱床ができるとウランやトリウムとは共存しないことが知られています。つまり、それ以上鉛は増えないので、鉛同位体比は一定の値を保つと考えられています。東アジア各地の鉛鉱床の同位体比は調べられているので、青銅器の中の鉛の同位体比を測定する研究が行われてきました。表面からこぼれ落ちた錆を利用しても測定ができるということも、鉛同位体比分析が行われた大きな理由でした。

山陰の青銅器の研究

出雲地域では、弥生時代の遺跡からまとまった量の青銅器が出土しています。荒神谷(こうじんだに)遺跡はその代表と言えます。古墳時代の遺跡では銅鏡や小型の青銅器が出土しますが、個々の青銅器の重量を比較しても、全体の量を比較しても、弥生時代に比べて古墳時代は青銅器の量が激減していることになります。つまり、資源量が減ったということが推定されます。

弥生時代から古墳時代の多数の青銅器の鉛同位体比を比較すると、異なる傾向を示し、異なるサプライチェーンの存在が見えてきます。さらに、青銅器サプライチェーンの転換は二度起こったことが推定できています。それらの時期は、漢時代の中国大陸の気候変動に伴う人口急減の時期と対応付けて考えることができるようです。

このほか、「水銀朱」の硫黄同位体比の分析や日本で作られた銅鏡「倭鏡」の鉛同位体比についての話題提供もありました。

ディスカッションの時間では、主に考古学の研究者から、鉛同位体比の解釈についての質問が相次ぎ、関心の高さがうかがえました。

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