新知創造学際ハブでは、プロジェクトを紹介するパンフレットを作成しました。気軽に手に取っていただけるよう、手のひらサイズの蛇腹折りになっています。
全面的に協力してくださったのは仙台在住のイラストレーター 佐藤ジュンコさんです。たくさんの人物や実験装置、似顔絵を描いていただきました。また、編集には
清水修さん、デザインは古田雅美さんにご尽力いただきました。ここではイラストとともに内容の一部をご紹介します。
パンフレットは、東北大学 片平キャンパスの金属材料研究所 本多記念館やエクステンション教育研究棟 広報展示スペースのほか、各参画機関の学際ハブ関係部署にあります。


表紙のふたり

表紙ではふたりの人が話をしています。
左の人が「試料のサイズはどのくらいですか?」と尋ねました。
左の人は、材料科学の研究者です。右の人に分析の相談を受けて、質問しているところでしょう。分析装置にそのまま入るかどうかを気にしているようです。
右の人は人文科学の研究者で、「史料はこのくらいです」と答えます。
同じ「しりょう」という言葉でも、漢字が違いますね。実はこれ、文理の学際研究、特に分析の場面の「あるある」なんです。
材料科学の世界では、たくさんある同じ物質の一部を「試料」として分析し一般化して考えるのが普通ですが、人文科学との学際研究では、わずかしかないモノをいかにして調べるかが重要なポイントになります。
新知創造学際ハブでは、この「しりょう」漢字でどう書くか問題の一つの解として、もっと広い意味を持つ「資料」を使うことにしています。

裏表紙に表紙のふたりがまた登場します。
ふたりとも笑顔でマグカップを片手に研究の相談をしているようです。すっかり打ち解けた雰囲気です。
このふたりが近い将来、資料の分析を通して新しい発見をするのが楽しみですね。
新知創造学際ハブがめざすのは、
異分野の研究者たちが刺激しあって、
それぞれがハッピーになるコミュニティ
新知創造学際ハブは、文系と理系の学際研究コミュニティです。人文科学と材料科学の研究者が同じモノを見て、そこに内在する歴史や経緯を解き明かすべく、議論しあい、手を動かし、考える。そこから革新的な知が生まれると考え「新知創造」と名付けました。
材料研究で世界をリードする東北大学 金属材料研究所(金研)を中核としたこの取り組みは、文部科学省の「学際領域展開ハブ形成プログラム」に採択され、2023年9月に始まりました。毎年20を超える文理の共同研究課題が立ち上がっています。
また、「金属遺物」などテーマごとにグループを作り、定期的にオンライン研究会を開いています※。新しい挑戦に向けて今抱える悩みを相談できる場でもあります。
※「金属遺物ユニット」などの研究ユニットのこと

新知創造学際ハブってどんなとこ?
新知創造学際ハブを牽引する研究者たちの体験談です。

学際ハブは科学の楽しさを思い出させてくれる場所
河部 壮一郎 教授 (福井県立大学 恐竜学部/福井県立恐竜博物館 研究員)
化石だけでなく現生の鳥類・爬虫類・哺乳類の脳や内耳をX線CTで計測し、比較解析する古生物学者です。恐竜の耳のかたちから聞きやすい音域を特定し、そこから声を推定する研究も行っています。2025年に日本初の恐竜学部が誕生、その教員として新時代の人材を育てようと走り回っています。東北大の金研を訪ねたとき、学際ハブの研究テーマ「銅鏡」を見せてもらいました。つい「おもしろい! 恐竜に慣れすぎちゃってて、おもしろさを忘れてた!」と叫んでしまいました。脳内で切れかけていた神経回路が繋がったようです。
恐竜博物館の隣に恐竜学部の新キャンパスができ、新しい発掘現場での作業も始まります。新発見をお楽しみに。

従来の研究手法の限界を学際ハブで打開しました
ライアン ジョセフ 准教授 (岡山大学 文明動態学研究所)
アメリカ出身で、中学生のときにサムライかっこいいなと憧れ、本で学びました。江戸時代がどうして成立したか調べるため時代を遡り、ついに考古学でしか扱えない時代に辿り着きました。日本の大学に留学したものの、「外国人が日本の考古学界でやっていくのは難しいだろう」と別の仕事に就きました。それでも夢は捨てきれずにいたところ、妻が「やりたいことをやったら」と。その一言で一念発起、日本の大学院に進学し、夢が叶いました。
学際ハブと出会い、ずっとやりたかったX線CTや中性子を使い始めました。作り方や内部構造などいくら遺物とにらめっこしてても見えてこないものも、学際研究なら道が開けそうです。

学際研究で知った分析手法を専門分野に活かせるかも?
桑 静(サン ジン)准教授 (岩手大学 理工学部/平泉文化研究センター)
中国で在籍していた大学の研究室は日本と交流がありました。私は「思い切った挑戦ができるのは学生のうち」と考え、博士課程は岩手大学で学ぶことにしました。
博士号取得の年、全学の学際研究組織「平泉文化研究センター」が発足、出土品の分析に携わることになりました。同じように見える試料について違いを詳しく教えてもらうと、考古学的解釈と分析結果との結びつきが分かっておもしろくなってきました。学際研究の楽しさを知ったのです。
もし中国にいたら、千年前に日本へ渡った陶磁器に触れることはなかったでしょう。今は学際ハブを通じてさまざまな手法に挑戦し、学際研究の重要性と魅力を再認識しています。

考古学はデータサイエンスです
岩本 崇 准教授 (島根大学 法文学部 考古学研究室)
青銅器が専門で、銅鏡の詳細な分類と年代研究を行ってきました。学際ハブに加わったとき、他の研究がひと段落し研究室の増員のタイミングもうまく重なり、自分にとって異分野である「材料分析」の世界に飛び込んでみようと決意しました。
鉛同位体比分析やICP-MS、量子ビームなど、分析手法をいろいろ試しています。数値は独り歩きしがちですが、裏付けがあって初めて意味を持つものだと考え、データの信頼性には気を遣っています。必要に応じて破壊分析をしてデータ比較をします。でもそれは将来、非破壊分析だけで分かるようにするための準備です。信頼できる手法を確立したいと思います。
学際ハブ推進室長より

「モノに宿る声」をすくい上げよう
新知創造学際ハブ推進室長 藤田 全基(まさき)
東北大学 金属材料研究所教授
科学が発展した現代にも、解き明かされていない「謎」はたくさん残っています。例えば、遺跡から発掘された古代の遺物ひとつをとっても、なんのために、どうやって作られたのか、分からないことばかりです。
文系・理系の研究者が集う「新知創造学際ハブ」にはあらゆるモノがやってきます。銅鏡も貝も芸術作品も。私たちは知的好奇心に突き動かされ、有形無形のモノに宿る声をすくい上げます。その試みがまた、新たな問いを生み出すのです。
金属に限らず、材料の専門家が金研には揃っています。研究者のみなさん、挑戦してみたい研究テーマが浮かんだ際には、気軽にお声がけください。新たな知とさらなる問いが織りなす物語をぜひご一緒に。
新知創造学際ハブで研究するには?
まずは、学際ハブの問い合わせ窓口にご連絡ください。対面あるいはオンラインでご相談に応じます。学際ハブ関係機関の豊富な人材・装置の中から、最適な共同研究パートナーにお繋ぎし、新しい知の創造に向けて伴走します。
学際ハブのひとびと
イラスト面にはたくさんの人が描かれています。体験談に登場する4人の研究者や推進室長もいますが、実はこの中に金研の学際ハブ推進室メンバーや担当の事務職員がモデルになったイラストがちりばめられているんです。もし学際ハブ推進室に知り合いがいたら、どの絵が誰のイラストか、探してみてくださいね。

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