IKH - 新知創造学際ハブ

金研 学際カフェ「天地を感じる結晶『耳石』」を開催しました

学際カフェとは

新知創造学際ハブ事業は、人文科学と材料科学の学際領域のコミュニティを作ることを目標としています。

学際領域研究の第一歩は異分野の研究について話を聞き議論すること、と考えて、サイエンスカフェ方式の話題提供者と専門外の人とのコミュニケーションの場「学際カフェ」を始めました。

初めての学際カフェは、5月15日、金属材料研究所内で開催しました。


耳石のお話

金魚の星状石(スケール付き)©高橋玄
金魚の星状石薄片の偏光顕微鏡写真 撮影:高橋 玄

今回の学際カフェの話題提供者は、金属材料研究所 量子ビーム金属物理学研究部門(藤田研)学術研究員の高橋 玄 さんです。「魚類耳石における炭酸カルシウム結晶構造の制御機構」と題して、この3月に学位を取得した東京大学での魚の耳石(じせき)の研究についてお話ししました。

魚には左右の内耳にそれぞれ3つの耳石(炭酸カルシウム結晶)があり、多くの魚では、3つのうち1つ(星状石)だけが不安定な結晶構造をしています。高橋さんは、魚の種類による耳石の結晶構造の違いを調べ、その中から金魚を選んで星状石を調べました。まず、星状石中のタンパク質を抽出しましたが、結晶成長に関わる成分は見つかりませんでした。次に結晶を偏光顕微鏡で観察し、とても珍しいモザイク結晶であることを突き止めました。

※モザイク結晶:小さい単結晶がほぼ同じ向きで並んでいる結晶

さらに成長の起点となる中心部を取り出すため、金魚を育て、生まれたばかりの金魚の耳石を取り出して透過電子顕微鏡で観察しました。すると、星状石の結晶成長の起点は、それ以外の部分と全く同じ向きを持つ結晶であることが分かりました。一方、星状石以外の耳石では、核となる結晶が複数あり、それらが有機物に覆われて結晶成長の起点となるという複雑な構造をしていることが分かりました。

これまで体験したさまざまな分野の研究室での研究生活で感じた、分野による文化の違いについても言及がありました。会場からは人の耳石についての質問や、異分野の研究についての感想も聞かれました。

手作りの模型で図の説明をしているようす
図が何を表しているのか立体模型で説明しているようす
複数の参加者が説明スライドを撮影しているようす
学際カフェの会場のようす

新知創造学際ハブ推進室では、学際カフェを研究所外に広げて続けていこうと考えています。メールマガジン「新知創造学際ハブ ニュースレター」やウェブページなどで事前にお知らせします。お茶を飲みながら、研究者の近くで話を聞き、やり取りをするサイエンスカフェに興味がある方はぜひご参加ください。

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