Three-dimensional Metal Art
金属立体彫刻への挑戦
美大生からの問い合わせ
ある日、結晶物理学を研究している金属材料研究所(金研)の藤原研究室に、一人の美大生からメールが届きました。金属の結晶成長を利用した美術作品を作りたいという相談でした。藤原教授は、経験こそありませんでしたがとても興味を持ち、話を聞いてみることにしました。
その学生の希望は、卒業制作として金属彫刻を作りたいというものでした。締め切りまで5カ月。研究室では、特別な専門知識がなくても安全に制作できる素材を探し、学生と共に結晶が美しく成長する条件を探すことにしました。
材料研究とは真逆への挑戦
とはいえ、普段の研究ではできるだけ一様に平らに成長する条件を探している材料研究者には、まるで真逆の要求です。最終的には芸術家が自身の手で作れるようにするため、大気中で結晶ができるように材料の候補は低融点のビスマスBi、アンチモンSb、インジウムIn、ガリウムGaに絞られました。これらの元素を使って、大きく美しい結晶になるかは、やってみなければ分かりません。
美大生が金研に通って共同実験が始まり、試行錯誤の日々が続きました。実験にかかる費用は、新知創造学際ハブが支援しました。
「どんなデザインを目指すのか?」と研究者が尋ねても、芸術家からは「実際の結晶を見てみないとイメージが湧かない」という返事が返ってくるばかりでした。


金属彫刻の新しい作風確立へ
やがて材料の組成や冷やす時間を変えることで、結晶成長を制御することができるようになりました。実験で分かったことは、低純度の金属でも光沢のある結晶ができ、また、不純物があることで予期せぬ形状の結晶ができるということです。作品には採用されませんでしたが、酸化膜によってさまざまな色が着くことも分かりました。
小さい試験片で形ができるようになったら、芸術作品の構想が固まりました。「200 cm✖️40 cmくらいのサイズの作品にしたい」との希望でした。今度は藤原研の大学院生や助教が美術大学に出張して共同で大型結晶を何枚も作りました。その後も、美大生が一人で結晶作りを続け、多くの結晶の中から作品に使うものを選び出しました。



左から金研の藤原航三教授、制作者の松岡 美穂さん、金研の大黒晃 大学院生(当時)、上段は松岡さんの指導教員の平戸貢児教授(当時)
学生が選んだ金属結晶は、黒檀の台に載せられ、作品として完成しました。これは東京で開催された2つの展覧会に出品され、彫刻の全く新しい作風として評価されました。
その後、この作品は金属材料研究所で公開されることとなり、現在も1号館1階ロビーに展示されています。
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