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サイエンス・デイ オブ ザ イヤー2026文部科学大臣賞を受賞しました

新知創造学際ハブ推進室は7月26に開催された学都「仙台・宮城」サイエンス・デイに「錆びてかすれた古代のハンコを科学の力で解読しよう!」というタイトルでブース出展しました。内容は、現在進められている共同研究からヒントを得たものです。

出展および8月3日に開催されたサイエンスデイAWARD2026表彰式の中で行われたサイエンス・デイ オブ ザ イヤー2026プレゼン審査の結果、新知創造学際ハブ推進室が文部科学大臣賞を受賞しました。また同時に金属材料研究所の佐々木 孝彦 所長がベストプレゼンター賞(賞創設者の部)に選ばれ、嬉しいダブル受賞となりました。

サイエンス・デイには大きく分けて2つの表彰制度(サイエンス・デイAWARDとサイエンス・デイ オブ ザ イヤー)があります。サイエンス・デイAWARDは、出展団体や個人がお互いに応援し合ったり表彰し合えるしくみで、誰でも賞を創設できます。金属材料研究所は2022年から金属材料研究所賞を創設しています。一方、サイエンス・デイ オブ ザ イヤーは科学・技術を社会・一般に伝える優れた方法論を審査・表彰により可視化・共有化することを目的として、2016 年から始まった賞です。

教室の黒板の前に並ぶ人々
サイエンス・デイ出展後のスタッフ集合写真
(このほか別の出展との掛け持ちで藤澤 敦 特任教授が参加)
「サイエンスデイ」と映し出されたモニターの前に並び笑顔を見せる人々
サイエンス・デイ オブ ザ イヤー贈賞式の懇親会場にて

研究ストーリー

大正から昭和にかけて中国の印章をたくさん集めた篆刻(てんこく)家 太田孝太郎氏(1881-1967)が残したコレクションが、岩手県立博物館に所蔵されています。その数は1,094点に上り、紀元前から近代までの広い時代、さまざまな形、漢字以外の文字など多種多様な印章のコレクションとして評価されています。1954(昭和29)年に国宝となった「金印」が本物であることが分かったのは、太田氏の論文が決め手だったと言われています。

岩手大学 平泉文化研究センターにいて、太田コレクションに着眼した考古学者 劉海宇教授(現 山東大学 文化遺産研究院)が一つひとつ印面を読み、複数の書籍にまとめています。しかしその中に、あまりに古くて表面が錆び、読めないものがありました。

劉教授を中心とした共同研究グループは「X線CTで撮影したら読めないだろうか?」と新知創造学際ハブの研究課題に応募し、東北大学 総合学術博物館のX線CTで分析を試みました。総合学術博物館では、新知創造学際ハブ推進室員を兼務している藤澤 敦 特任教授が立ち合い、撮影と解析は鹿納 晴尚 博士(現:福井県立大学 恐竜学部)が担当しました。果たして、X線CTで古いハンコは読めるようになったのでしょうか?
※X線透過像は、物体の透過率(ほぼ密度に比例)の違いが明るさの違いとなって現れます。X線CTでは、物体を回転しながら何枚も撮影し、再構成することで、物体の密度の違いを立体的に再現することができます。

YouTube 新知創造学際ハブチャンネル ショート「このハンコ、CT撮影お願いします」

イベント出展まで

サイエンス・デイでは、ハンコを押してみて読めないことを確認してから、三次元計測像やX線CT像を実際に動かして解読に挑戦してもらいたいと考えました。でも本物の印は岩手県立博物館に所蔵されていて、貴重な文化財なので朱肉などをつけることも禁止されています。

そこで、古印を三次元計測して、3Dプリントで再現したハンコを用意しました。研究に使われた読めない古印だけでなく、研究者や学芸員おすすめの古印も加え、4点を再現しました。

三次元計測

三次元計測には、宮城県産業技術総合センターに研究員技術的支援を依頼し、色情報を含めて計測できる三次元デジタイザにて行いました。光の三原色と白色光を点滅間隔を変えながら何度も照射します。影の部分はうまくデータにならないので、回転させたり、ひっくり返したりしてすべての部分に光が当たるように測定する必要があります。例えば、虎の印の腹の下のように穴が開いている部分は何度も印やカメラの位置を動かして撮影する必要がありました。

動画はデータ取得のようすです。実際には光はもっと早く点滅しますが、動画ではそのシーンは省略しています。

YouTube 新知創造学際ハブチャンネル ショート「【注意:光の点滅シーンあり】古いハンコのかたちを測ります」
古印を指さす男性
三次元計測の前に印面を確認しているようす

三次元造形

三次元造形も、宮城県産業技術総合センターに研究員技術的支援を依頼し、光造形システムにて行いました。光硬化樹脂にレーザーを当て、精細な3Dプリントを実現する装置です。今回は印面を最も精細にプリントしたいのですが、3Dプリンターは一般的に底面の造形が苦手です。そこで、ハンコの三次元データを上下に分割して、印面を上にして造形し、後から組み立てることにしました。三次元CADシステムによるデータ分割も依頼し、位置ずれを防ぐ凸凹をつけてもらったことで組み立てが容易になりました。

光造形後、液体から取り出すところと、出来上がった再現ハンコの動画です。

YouTube 新知創造学際ハブチャンネル「光造形で古印のかたちを再現」
光造形した樹脂を触るビニール手袋をした指
樹脂プールから引き揚げた造形物を確認しているところ

サイエンス・デイ当日

サイエンス・デイ当日はあいにくの大雨にもかかわらず、多くの方が来場しました。ハンコを押すために親子連れの行列ができた時間帯もありました。

本物の古印を観察しよう

企画段階から協力を惜しまなかった古印研究者の劉海宇教授や岩手県立博物館の工藤健 学芸員がゲスト参加し、来場者に熱心に古印の解説をしました。バックルでもありハンコでもある古印や、三重の入れ子になった古印など珍しい形のハンコに関心が集まりました。

教室の机の上に置かれた本を見ながら話している人々と、説明している人
古印研究者の劉海宇教授(左)や岩手県立博物館の工藤健 学芸員(中央)に説明を受ける参加者たち
印面が見えるように置かれた古い6つの印章
サイエンス・デイ当日に展示された岩手県立博物館所蔵の本物の古印

再現ハンコを押してみよう

虎の印(原寸大)・バックル型の印(大きさ2倍)・読めない鼻紐(びちゅう)印(大きさ2倍)・読めない両面印(大きさ2倍)の4種の再現ハンコを押すコーナーです。およそ150人の方がハンコ押し体験をしました。みなさん、プリントの押印欄に丁寧に押していました。

ハンコを押す女児のようす
プリントに再現ハンコを押すようす
バックルの形をした再現ハンコを押す男性の手
バックルの形をした再現ハンコを押すようす

三次元計測データを観察しよう

3Dプリントの元になるデータを作るために計測した三次元データは、表面の形だけでなく色の情報も持っています。再現ハンコは半透明なので、元の印象の色を感じてもらうため、三次元計測データを展示しました。気になる場所を拡大したり、ハンコの中に入るような体験もできます。

パソコンの画面を覗き込む人々
三次元計測データの観察コーナー
教室の一角に置かれた縦型モニターに映る動画を見る人々とそれを見ている人々
隣には動画コーナーもありました

X線CTデータを観察しよう

いよいよX線CTデータを使って読めないハンコ2つの印面を解読します。見慣れない篆書(てんしょ)の漢字なので、選択肢から最も近いものを選んで答えます。難易度★の鼻紐印は表示モードを切り替えるとすぐに文字が浮かび上がりますが、ハンコなので鏡文字です。しかし、すぐに正解する小学生もいました。さらに、難易度★★★の両面印を読むには操作が必要です。X線CTと聞いて病院で受ける検査を連想した人には、どんなときにCTを撮るかを思い出してもらいました。そうです、実際には切れないものの切断面を見たいときですね。どうしたらハンコの文字が読めるか考え、スタッフに操作方法を教えてもらうと文字が見えてきます。コンピュータ上での断層像が考古学にも役立つことに関心している参加者もいました。

ノートパソコンを操作する子どもと画面を指さす手
教えてもらいながらX線CT像を操作する小学生
プリントを広げてノートパソコンの画面と見比べる人々
PCの画像とプリントを見比べ、該当する文字を探しているようす

サイエンス・デイ オブ ザ イヤー2026プレゼン審査

8月3日、東北大学 工学部 サイエンスキャンパスホールで、サイエンス・デイAWARD2026の表彰式と同時に、サイエンス・デイ オブ ザ イヤー2026のプレゼン審査が行われました。新知創造学際ハブ推進室「錆びてかすれた古代のハンコを科学の力で解読しよう!」は審査員推薦プログラムとして1分プレゼンに臨みました。

また、サイエンス・デイAWARDの表彰式では、金属材料研究所の佐々木孝彦所長が「金属材料研究所賞」を創設し、宮城県泉館山高等学校DXLabの
「まっすぐな線だけでふしぎな形が作れるって本当? Let’s Play with Lines!」に授与しました。そのときのプレゼンテーションが、ベストプレゼンター賞(賞創設者の部)に選ばれました。

スクリーンの前で発表する人
1分プレゼン「錆びてかすれた古代のハンコを科学の力で解読しよう!」のようす
スライドに映し出された本多光太郎の銅像がコメントを発している下で、高校生4人に賞を渡す男性
金属材料研究所賞授与のようす

サイエンス・デイ オブ ザ イヤー2026贈賞式

8月18日、東北大学 片平キャンパスの「知の館」3階で贈賞式が開かれました。主催者の大草 芳江氏の挨拶や来賓の祝辞の後、各賞の贈呈と受賞者挨拶があり、最後に審査員による講評がありました。

ご自身が物理学科卒業後、哲学を専攻されたという経歴を持つ野家啓一 東北大学名誉教授が書いてくださった文部科学大臣賞の選評は、「サイエンスデイの出展企画は、当然ながらそのほとんどが科学・技術をテーマとするものです。ただ、もともと学問に理系と文系の明確な境界はありません」という言葉で始まります。「人文科学と材料科学が共に歩むことで生み出される『新たな知』を効果的に社会へと伝え、次世代の探求心を育む好循環を生み出している」と評価いただきました。ありがとうございました。

賞状を受け取るようす
文部科学大臣賞授与のようす
額装された賞状
文部科学省の透かしが入っている文部科学大臣賞の賞状
賞状を受け取るようす
東北大学 金属材料研究所 佐々木孝彦所長の代理でベストプレゼンター賞(賞創設者の部)を受ける金研の加藤秀実 副所長
マイクの前で話す人
新知創造学際ハブの出展について選評を読み上げる審査員の野家啓一先生

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