IKH - 新知創造学際ハブ

島根大学の岩本 崇 准教授が第37回濱田青陵賞を受賞しました

濱田青陵賞とは

濱田青陵賞は、岸和田出身の濱田 耕作 博士の没後50年にあたる1988年に創設された賞です。「青陵」は濱田博士の別名です。

濱田博士は、京都帝国大学に日本で初めての考古学教室を開きました。ヨーロッパ留学の経験を活かし、近代的かつ科学的な考古学を教えました。

この賞は、日本の考古学の先駆者として偉大な功績を残し、多くの後進を育成した博士の業績を称え、考古学の振興に寄与する目的で、顕著な業績のあった新進の研究者や団体を選考し、表彰するものです。本人を含め、濱田家と朝日新聞社との縁が深かったことから、岸和田市と朝日新聞社が創設しました。

古墳時代銅鏡を考古学と分析化学からみる

今年の濱田青陵賞を受賞したのは、新知創造学際ハブの参画機関の一つである島根大学 法文学部の岩本 崇 准教授です。授賞理由は、「三角縁神獣鏡を軸とする古墳編年の構築と地域史の実証的研究」です。

岩本博士は、三角縁(さんかくぶち)神獣鏡(しんじゅうきょう)と古墳時代の研究を専門としています。三角縁神獣鏡とは、文様のある面の縁が尖っていて断面が三角の、神や獣が描かれた銅鏡です。

従来、銅鏡の研究はその文様を見ることが中心でした。岩本博士は、高精度の三次元デジタルデータを参考にしながら、実物を観察して銅鏡の断面図を作成しました。そして、その断面形状と文様のタイプに相関関係があることを発見します。さらに、同時期に作られたことが明らかな別の銅鏡や石製品・鉄製品、土器などと組み合わせて、前期古墳時代の三角縁神獣鏡の年表を作りました。それを軸として三角縁神獣鏡が生産されてから古墳に副葬されるまでの流通モデルを構築しました。独自の視点と緻密な調査研究による問題提起が高く評価されました。

また、新知創造学際ハブに参加して金属材料研究所と連携するなど、理化学的分析への取り組みについても期待を寄せられています。

第37回濱田青陵賞授賞式・記念シンポジウム 冊子より 図1 古墳編年の基軸となる三角縁神獣鏡の編年と年代観

第37回濱田青陵賞授賞式

第37回濱田青陵賞授賞式は、9月21日、岸和田市内で開催されました。授賞式などのようすは、YouTubeなどで同時配信されました。

表彰式典の後、受賞者記念講演「考古学と分析化学からみた古墳時代銅鏡の歴史的意義」と記念シンポジウム「古墳時代の鏡・玉・剣―考古学と分析化学から迫る「三種の神器」の源流―」が行われました。

記念講演で岩本博士は、年代論を出発点とした鏡の生産・管理・分配・受領・保有・副葬をめぐる問題について、倭王権だけでなく地域社会の動態に着目して検討することで、古墳時代の銅鏡が持つ歴史的意義に迫りました。

また、青銅器に含まれる鉛に着目した鉛同位体比分析による銅鏡の分類を紹介しました。時期に応じて鉛原料の変化がみられ、原料入手ルートが変わったことが推察できます。岩本博士はさらに分析・研究を進めると述べました。

記念講演をする岩本博士
(YouTube 濱田青陵賞運営協議会チャンネルの配信より)
発表スライド「鏡と古墳時代の年代論」三角縁神獣鏡の断面図作成のようすと結果
(YouTube 濱田青陵賞運営協議会チャンネルの配信より)
第37回濱田青陵賞授賞式・記念シンポジウム 冊子より 図9 古墳時代銅鏡の鉛同位体比[A式図](岩本作成)
会場に掲げられた看板
登壇者との記念撮影のようす

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